機関誌いずみ 2012年9月号 特集
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しょうか。反面、原発から遠く離れた県外に近い場所なのに、汚染が進んでいる地域もあります。これは、気象条件や地形などが関係しているためです。放射能は風に乗って運ばれ、雨に混じって地表に降り注ぎます。風の進行方向にあり、なおかつ雨が多く降った地域は汚染が進み、そうでない地域は、原発の近くであるにもかかわらず、あまり汚染が進んでいません。染というイメージが広がってしまっているために、福島産の農産物や魚介に買い手がつかなくなり、福島県に住んでいるというだけで特異な目で見られてしまう。それがいま、福島の方々が直面している現実です。 「風評被害がひどい…」。6月、たこ焼きボランティアで福島県を訪れたある女性は、現地の人からこの言葉を聞いて衝撃を受けたと言います。「福島で子育てする母親は、子どもを虐待しているようなものだ(放射能汚染地域に子どもを住まわせているという意味で)、ということを言われ、現それなのに、福島県=放射能汚物の復興は進んでいる。でも心は…地のお母さんたちは追いつめられています。いろいろな事情から、福島を離れられない人もたくさんいるのに…」。そう声を詰まらせます。バスで現地を回ると、津波によって町が消滅した地域が多いものの、がれきの撤去などはひと通りめどがつき、物やハード面の復興は進んでいる、と実感するそうです。しかし、心の復興に関しては、まだまだこれから。「特に福島は、放射能汚染によって先の見えない不安にさらされ続けています。物が復興しても、気持ちが前向きになれないんです。物の復興から、心のケアに目を向ける時期にきていると思います」(ボランティア参加者)。ProjectVolunteer意外と知られていない、福島の現実東日本大震災から1年半、あれほどニュースや新聞報道が流れたのだから、私たちは「東北の状況について詳しく知っている」と錯覚してしまいますが、ボランティアで現地を訪れた人や、いままさにそこに住んでいる人たちは「本当に知ってほしい情報が伝わっていない」と口々に言います。たとえば福島県。震災によって原発事故が起きたため、県外の多くの人々は「原発周辺の地域は、すべてが放射能で汚染されている」と思いがちです。でも、実際にはそうではありません。図1をご覧ください。原発近辺であっても、あまり汚染されていない地域があることがおわかりで警戒区域及び計画的避難区域における航空機モニタリングの結果(警戒区域及び計画的避難区域における地表面から1m高さの空間線量率)被災地は、いまspecialspecialいまだ震災の爪痕が残るissueissue 福島の子どもたちを、大阪名物の「たこ焼き」で元気にしたい。そんな目的で企画されたのが「たこ焼きボランティア」。6月22日から3日間、機関誌いずみのモニターや組合員などおよそ30人が、福島県中丿沢温泉を訪れ、たこ焼き体験を通じて、現地の家族と交流を深めました。 このボランティアは、放射能の影響によって戸外で自由に遊べない親子連れを、放射能の影響が少ない地域に招き、思い切り遊んでもらおうという「福島の子ども保養プロジェクト(主催:福島県生活協同組合連合会など)」に組み込まれたもの。当日は、一家族にボランティアが1〜2名つき、大阪から持参した素材を使って、たこ焼き作りをいっしょに楽しみました。〈図1〉      す32※本マップには天然核種による空間線量率が含まれている。 ※実線で囲われた白色の領域は積雪のあった箇所を表しており、当該地域の地表面から1m高さの空間線量は、雪の遮蔽により、雪が無い時に比べて減少している可能性がある。出典:「警戒区域及び計画的避難区域における航空機モニタリングの測定結果について」 [2012年2月24日](文部科学省報道発表)より  左の写真、何だと思いますか?これは、福島県のとある町で見つけた風景です。建物が津波で流され、住宅の基礎だけが残っていたところに、カラフルな花や文字が描かれています。地元の有志の人たちが「少しでも元気が出るように」と描いた、心のデザインなのです。 いまだ震災の爪痕が残る現地。福島県で行われた「たこ焼きボランティア」を通して、「いま、現地はどのような状況なのか」をお伝えします。福島の子ども保養プロジェクトたこ焼きボランティア特集

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