機関誌いずみ 2024年8月号
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中国(※1)マーシャル諸島は太平洋中西部に浮かぶ、たくさんの珊瑚礁からなる国です。アメリカは1946年から58年までここを核実験場とし、67回もの実験を行い、核実験による放射能でほぼ全域が汚染されました。広島に投下された原爆の約7,000発分の威力があったとされています。第五福竜丸の被ばくは、原水爆禁止運動が世界中に広がるきっかけになったという点で、ビキニ環礁核実験場は2010年に世界文化遺産に登録されました。(※3)検査では、魚から10cm離した測定器が1分間に100カウントの放射線を検出すれば廃棄処分としました。国立東京第一病院で治療を受ける乗組員第五福竜丸展示館資料より死の灰写真提供 第五福竜丸平和協会魚の検査のようす第五福竜丸展示館資料より(※2)爆発によって砕けた珊瑚の粉塵はキノコ雲に吸い上げられました。放射性物質を含むことから死の灰と呼ばれました。被害を受けたのは、第五福竜丸だけではありません。日本各地から多くの船が出漁しており、被害を受けました。乗組員が急性症状で治療を受けた例もありましたが、その記録はあまり残されていません。第五福竜丸の乗組員は、爆心地から160kmも離れているにもかかわらず、広島原爆の爆心地から1キロ程度の場所で被爆した人と同じぐらいの被爆線量であるといわれました。今月の特集3インドネシアパプア日本韓国ビキニ環礁フィリピンニューギニア 1954年3月1日午前6時45分、アメリカはマーシャル諸島(※1)にあるビキニ環礁で「ブラボー」と名づけた水爆の爆発実験を行いました。 第五福竜丸は、ビキニ環礁から東に160kmのところで操業していました。突然西の方角が強烈に光り、暗い夜の海が昼間のように明るくなりました。その7、8分後にドドドと船底から突き上げられるような衝撃とごう音が船体を激しく揺らし、雨に混じって白い灰のようなものが降ってきました。これが死の灰(※2)です。日本に戻った後、乗組員は放射能により顔が焼けただれて黒くなっており、23人全員が被ばくによる「急性放射能症」と診断されました。その後も発熱や、白血球、骨髄細胞の減少、造血機能障害など、様々な健康被害の症状が出ました。 第五福竜丸が獲ったマグロは、水揚げされ東京や大阪などの大都市の市場に送られましたが、第五福竜丸の被ばくが報道され、東京や大阪の市場で放射能検査をしたところ、汚染されていることがわかりました。しかし、すでに販売・消費されているところもあり、「放射能マグロ」「原子マグロ」と恐れられ、マグロだけでなく、他の魚も売れなくなる深刻な風評被害も起こり、大きな騒動となりました。 その後、日本政府はビキニ環礁周辺で操業したり、通過した船は被ばく検査を受けるよう指示。1分間に100カウント(※3)の放射線を検出した485.7トンの魚が廃棄処分となりました。全国で900隻余りの漁船が汚染マグロを獲ってきたのです。水爆実験に遭遇した第五福竜丸水爆実験に遭遇した第五福竜丸廃棄されたたくさんのマグロ廃棄されたたくさんのマグロ

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