福祉基金だよりvol.6
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コロナ禍でも、さまざまな支援活動を展開していますみいけ食堂!感染防止対策をしながらモーニングを提供2021.3桃山学院大学 社会学部 社会福祉学科 教授※ウエルビーイング:身体的・精神的・社会的に、すべてが満たされた状態。 地域福祉の主流化という言葉をご存じですか?社会福祉の中で地域福祉が中心になってきている近年の状況を指しています。現在はさらに進んで、政府が積極的に地域福祉を進める「地域福祉の政策化」とも言われています。その目指すところが「地域共生社会」です。地域共生社会と聞いて、どんなことをイメージするでしょう?地域に住んでいるみんなで助けあってくらしている姿、といったところではないですか。麗しい様子ですね。そうした助け合いのことを「共助」や「互助」と呼びます。 こうした純朴な「共助」や「互助」に対して批判的な見方もあります。それは、政府がちゃんと自分たちの責任を果たさずに、いろいろな問題の解決を地域に押し付けているというものです。この批判ももっともです。子どもの貧困率の高さは、これまでの「とまとちゃん福祉基金だより」でも紹介されてきたとおりです。そこに公的な対応が必要なことは言うまでもありません。 ただし、同時にもう一つの可能性も見逃すことはできません。それは、私たちが定常化しつつある社会に住んでいるということです。これまでの一定の経済成長の上に、便利な社会(誰とも口をきかずに生活できるぐらい便利!)をつくり出してきているということです。こうした社会では、拡大を求めるよりも持続可能性(SDGs)が重要になります。物をたくさん作ることよりも、生き方としての豊かさを求める段階です。NPO法人ASOVIVA新年を記念し、みんなで撮影(1月)ProjetoConstruir ARTEL外国の子どもたちにオンライン授業支援NPO法人ナック(NAC)「親子で焼き芋」体験(10月)NPO法人ウィンウィン1000ピースのジグソーパズルにみんなで挑戦こども夢くらぶクリスマス会ができず、今年はプレゼントのお渡しのみ(12月)キッズ・シルバーコミュニティー(富ちゃん)食堂お弁当の調理風景(12月)ねごと子ども朝食堂スタッフ集合写真はまひが子ども食堂カツカレーライスと手作りフルーツポンチを提供(12月)みんなの食堂「ReCo」コロナ禍での防災・減災講座の風景(12月)モモの木お弁当の手渡しの様子くすのき子ども食堂看護学生のボランティアさんとお弁当の準備とまとちゃん福祉基金支援団体 活動紹介小野 達也 貧しさとはお金やモノがないこと(だけ)ではなく、また、ほかの人と比べて低い生活レベルであることでもありません。ノーベル経済学賞受賞学者のアマルティア・センの考え方を大胆に援用すれば、貧しさとはその人らしい生き方(潜在能力の発揮)ができていないことです。とすれば、貧しさを脱するとは、貧しくない状態ではなく、その人らしい生き方というウエルビーイング※を実現することです。定常化した社会では、こうした福祉の考え方が重要です。 そうであれば福祉の場とは、子どもの貧困にあるような問題への対応と、生き方としての豊かさ(ウエルビーイング)の実現という2つのテーマを結び付けていく場になります。政府のみに取り組みを任せるのではなく、地域からこうした場を積極的につくることを否定することはできません。いまこうした果敢な試みがいくつも生まれ始めています。例えば、子ども食堂は、その象徴とも見ることができます。こうした場をつくっていくことを応援しているのが、とまとちゃん福祉基金です。このように考えると、とまとちゃん福祉基金は貧困の福祉を支えるものではなく、福祉の貧困を超えて、これからの福祉の可能性を拓いていくことにその真骨頂があることがわかります。そしてあらたな福祉は生まれる6とまとちゃん福祉基金だよりVol.

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