食の安全学習パンフ2021年
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 この騒動を受けて、世界保健機関と国連食糧農業機関の合同残留農薬専門家会議(JMPR)は、IARCが発がん性の根拠とした全論文・報告書を含めて詳細に審査し、グリホサート、ダイアジノン、マラチオンの3つの農薬とも、作物残留を通しての人の健康へのリスク(発がん性、遺伝毒性)はないと判断しています。日本の食品安全委員会も2016年に「神経毒性、発がん性、繁殖能力に対する影響、催奇形性及び遺伝毒性は認められなかった」と結論付けています。欧州や米国、カナダ、ニュージーランド等の食品のリスク評価機関も同様の見解を示しています。 IARCが行ったのは、「ハザード(どんな危害があるか)」の特定です。一方、JMPRや食品安全委員会等リスク評価機関が行ったのは、「ヒトに対する実際のリスクの評価」です。実際に摂取する量によってリスク度は異なります。週刊誌等に「子どもの脳に有害」という記事が見られますが、そのような科学的な証拠はありません。 農薬等の安全性評価は、国際的に合意されたテストガイドラインによる動物実験の結果が基本になります。記事で紹介されている実験は、培養細胞(生体外で培養されている細胞)による実験です。培養条件下では生体内での生理的条件から離れてしまい、実験結果を、そのまま生体に当てはめることはできません。 ネオニコチノイド系農薬は、神経細胞の受容体(神経伝達物質が結合する部位)に作用します。受容体の親和性(くっつきやすさ)はヒトと昆虫では大きく異なり、昆虫のほうが80倍~数千倍も親和性が高いことが知られています。 昔、天然物であるニコチンが殺虫剤として使われていましたが、人間や家畜への毒性が高いため、使われなくなりました。そこで、人間や家畜への影響が少なく、昆虫に対して選択的に神経毒性を発揮する新しい農薬としてネオニコチノイド系農薬が開発されました。 ネオニコチノイド系農薬は、ヒトをはじめとする脊椎動物への安全性が高く、殺虫効果も高いことから広く使われています。とりわけ、斑点米の原因となるカメムシの駆除に用いられており、稲作には欠かせない農薬になっています。 引き続き、情報収集に努めていきますが、現時点では、グリホサートもネオニコチノイド系農薬も特別問題視しなければならない農薬だとは考えられません。生を図り、環境保全や食の安全に配慮した農林水産業や加工方法のことです。 生産者は、有機か一般栽培かに関係なく、「安全でおいしいもの」を丹精込めて作っています。0.1%に過ぎません。15(2)ネオニコチノイド系農薬(1)有機とは、自然環境(太陽・水・土地・大気)との調和を大切にし、そこに生息する多様な生きものとの共(2)「有機だから安全でおいしい」とは言えません。(3)2017年度、国内の農産物総生産量のうち有機農産物が占める割合は野菜や大豆は0.4~0.5%、米や麦は④食品のリスク評価機関は「人の健康へのリスクなし」と判断しています。⑤ハザードの特定とリスク分析の違い⑥2020年度より、コープ・ラボ(商品検査センター)で検査しています。結果は、検出されないか検出されても残留基準よりも大幅に低い値となっています。①動物実験では、こうした作用は認められていません。②昆虫の神経にはよく効きますが、ヒトの神経にはほとんど効きません。③ネオニコチノイドは、ニコチンに似た成分(ニコチノイド)をベースにした物質です。④稲作に欠かせない農薬です。⑤コープ・ラボ(商品検査センター)で検査していますが、検出されないか検出されても残留基準よりも大幅に低い値です。①農薬は基準通り使用されていれば、健康に影響するような残留量にはなりません。②有機農産物の方が、栄養価がすぐれているというデータはありません。③おいしさの秘密は鮮度や品種だと言われています。6.生き物にやさしい「有機農産物」

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