機関誌いずみ2022年3月号特集ページ

〜絵本を親子のふれあいのひとつに〜絵本のある子育て

親子のコミュニケーションツールのひとつと言われている絵本。
いずみ市民生協では、子育て支援の取り組みとして、「コープのえほんでスマイル」(※P5下段参照)を実施しています。3月お届けの絵本『あかちゃんとわらべうたであそびましょ!』は堺市出身の絵本作家、さいとうしのぶ先生の作品。先生のアトリエにお邪魔して、絵本と子育てのこと、本づくりへの思いなどをお聞きしました。

さいとうしのぶ先生プロフィール

大阪府堺市生まれ。嵯峨美術短期大学洋画科卒業。テキスタイルのデザイナーなどを経て、インターナショナルアカデミー絵本教室に学び、現在は絵本創作に加え、手づくり絵本を広める活動でも活躍。主な作品に『あっちゃんあがつくたべものあいうえお』『しりとりしましょ!たべものあいうえお』『おみせやさんでくださいな!』(以上リーブル)『おべんとうばこのうた』(ひさかたチャイルド)『あかちゃんとわらべうたであそびましょ!』(のら書店)など多数。

会社員から絵本作家へ

小学校の卒業文集では「絵本作家になりたい」と書きました。でも、家にいっぱい絵本があったわけでもなかったし、本にどっぷりの子でもありませんでした。図書館にはよく通っていたけれど、読書感想文は嫌い、そんな子どもでした。短大卒業後は商社に勤務してインテリア関連のテキスタイル(※)デザインをしていました。「小さい頃の夢を叶えよう」と一念発起したのは30歳のとき。回り道をして、絵本作家にたどりつきました。

※テキスタイル…服飾やインテリア用途の布や生地の柄のこと

さいとう先生が絵本を制作するアトリエのエントランス

絵本作りに活きている学童保育での経験

長い間、絵本とは無縁の生活だったので、絵本制作の勉強と併行して、子どものことをもっと知ろうと学童保育の指導員のアルバイトを始めました。子どもって忖度がないんです。面白かったら飛びつくし、面白くなかったら見向きもしません。子どもたちの心を躍動させることって何だろう?とずっとアンテナを張っている毎日はすごく濃厚で、子どもたちにたくさんのことを教えてもらいました。
『あっちゃんあがつく たべものあいうえお』(リーブル)、『スイスイスイーツ』(教育画劇)は、子どもたちとふれあうことで生まれた作品です。

『スイスイスイーツ』
◆作・絵/さいとうしのぶ
◆出版/教育画劇

子どもにだって好みはある!

子どもが生まれると、生後3か月頃から絵本の読み聞かせを始めました。「この子を本好きにさせよう」という気持ちより、「どんな本が好きかな?」「どんなリアクションをするんだろう?」という絵本作家としての興味で読んでいました。いろいろな絵本を読んだけれど、絵をじっと眺めていることもあれば、文章を読み終わらない内にページをめくろうとしたり、親が一生懸命すすめても無関心だったりしたことも。絵本と接する姿を通して、子どもにも好きなものはあるんだと気づきました。

絵本作りは苦しい

絵本を作っているときは、本当に苦しいです。毎回全力でマラソンをしている感じ。構想から完成まで数年かかる絵本もあります。でも、とにかく描き進めるしかない。私は、絵本を出版するだけではなく、子どもたちの前で読む〝絵本ライブ〞もやっているので、制作中の苦しいときは「早くみんなの前で読みたい」と思うようにしています。

子どもにとって、絵本とは?

私の経験上ですが、本にはたくさん助けられました。壁にぶち当たったときに、本に教えられたことや救われたことがあります。多くの考えがあるし、知らなかった世界にふれられるのが本の魅力。
また、学校や幼稚園で嫌な思いをしても、本を読むことで忘れたり、前向きになったりすることもあるでしょう。本って、そういう存在だと思います。

絵本を親子のふれあいのひとつに

今の親は、すごく子育てに真面目に向きあっていると思います。でもね、もうちょっと気楽でいいんじゃないかな。「子どもを本好きにする秘訣は?」「絵本の読み聞かせは毎日した方がいいですか?」とよく聞かれますが、好きに読めばいいんです。ページの最初から読まなくてもいいし、子どもが同じページをずっと見ていても、楽しんでいたらいいんです。「そのページ、何が面白いと思った?」と聞いて、会話が広がればいいと思います。何より親子がふれあえるのがいちばんです。
大人って、文章を追うことを重視してしまうんですね。でも、絵で表現されていることもたくさんあります。そこを読みとって欲しいなあ。

著書が並ぶアトリエの本棚

親子で楽しく絵本を読もう

さいとう先生に、親子で絵本を楽しむヒントを伺いました。

Q. 子どもへの読み聞かせはいつから始めればいい?

何か月から、という決まりはありません。お父さん、お母さんの時間と心の余裕があるときに読んであげましょう。

Q. 子どもが絵本に興味を示しません。

本屋や図書館に行って、子ども自身に本を選んでもらいましょう。その際、「この本、まだ難しいよ」「もっと物語のある本にしなさい」などとジャッジしないこと。子どもを信じてください。お父さんお母さんが楽しそうに本を読む姿を見せるのもおすすめです。「あんなに楽しそうにしているから読もう」と子どもの心が動きます。

Q. どんなときに読むのがおすすめ?

眠る前に読むようにすると、「絵本を読み終わったら、おやすみなさい」と思うようになります。また、「本を読んでもらった」と親からの愛情を感じて、満たされた気持ちで眠ることができるでしょう。

Q. 親子で絵本を一緒に楽しむにはどうすればいい?

いろいろなジャンルの絵本を手に取って、楽しんでいただければと思います。絵本専門士や保育士さんなどが紹介する絵本を手に取るのもおすすめ。
また、読み聞かせのワークショップに参加すると、読み方のヒントも得られます。親子で楽しい時間を過ごせますよ。

さいとうしのぶ先生のおすすめ絵本

『あっちゃんあがつくたべものあいうえお』

◆作/さいとうしのぶ
◆原案/みねよう
◆出版/リーブル

〈先生のおすすめポイント〉

子どもたちは自分たちの身の回りにあるものが大好きです。この絵本ではおなじみの食べ物がたくさん出てきます。子どもの名前のページを開いて一緒に歌いながら、楽しんでほしいです。

『おみせやさんでくださいな!』

◆作/さいとうしのぶ
◆出版/リーブル

〈先生のおすすめポイント〉

完成までに10年を費やしました。八百屋さん、パン屋さんなどいろいろなお店が登場します。すべてのお店のどこかに隠れているものがあるので、それを見つけるのもこの絵本の楽しみ方です。

『あかちゃんとわらべうたであそびましょ!』への思い

2022年3月に「コープのえほんでスマイル」の登録者にお届けする『あかちゃんとわらべうたであそびましょ!』について、お話しいただきました。

『あかちゃんとわらべうたであそびましょ!』
◆構成・絵/さいとうしのぶ
◆出版/のら書店

わらべうたの強さ

昔から歌い継がれてきたわらべうたは、子どもたちが大好きなあそびうたです。絵本ライブでわらべうたを歌い始めると、赤ちゃんたちが体を揺らして楽しそうに反応します。これは、ほかのお話のときには見られないこと。理屈ではないわらべうたの強さを感じました。絵本でそれを体感してほしいです。

子どもと一緒に楽しんで

私自身、育児中に『きゅうりのおつけもの』『いちりにりさんり』を何回も楽しみました。ページは気にせず、好きなわらべうたあそびを繰り返し楽しんでもらいたいです。子どもって、あっという間に大きくなってしまいます。子ども時代を大事に過ごしてほしいなと思います。

さいとう先生のわらべうたをYouTube 「とまとチャンネル」で公開中!

コープのえほんでスマイルとは?

いずみ市民生協では、子育て支援の一環として、家庭で親子がふれあうきっかけの1つになればと思い、満1歳~2歳のお子さまがいる組合員で「コープのえほんでスマイル」にお申し込みいただいた方に、2年間で合計4冊の絵本をお届けする取り組みを実施しています。絵本や読み聞かせ活動、子育て支援にかかわる専門家などからなる「コープのえほんでスマイル専門委員会」で、

初めて読み聞かせをする方にとっても、親しみ、取り組みやすい絵本

デザイン性、色使いや文章表現などが優れており、年齢を経ても楽しめる絵本

をテーマに毎年2冊の絵本をセレクトしています。申込方法や対象者、お届け方法など、詳しくは、ホームページをご覧ください。

『おやすみなさいおつきさま』
◆作/マーガレット・ワイズ・ブラウン
◆絵/クレメント・ハード
◆訳/せたていじ
◆出版/評論社

『にんじんのにんにん』
◆作/ふるやかおる
◆出版/アリス館

プレゼント企画

今まで「コープのえほんでスマイル」でお届けした中から抽選で10名様に絵本をプレゼントします♪
※写真はイメージです。どの本が当たるかはお楽しみに♪