機関誌いずみ2022年9月号特集ページ

作る人と食べる人をつなぐ生産者の「産直」への思い

 9月は産直月間です。いずみ市民生協では日本各地の99の産地、172品目の農産、水産、畜産の産直品を、組合員の食卓に届けています。
 今回は、「越裕之さんのほぐしめじ」を生産する(株)ハーツの越裕之さんに、産直への思いや、きのこ栽培でのこだわりについてエピソードを交えて語っていただきました。きのこについての疑問にも答えてくださっています。ぜひお役立てください。

いずみ市民生協の「産直」とは

 産直は、「安全でおいしい生鮮食品を」という組合員のニーズに応えて、組合員と生産者が一緒に育ててきました。「顔の見える安心感」や「確かな信頼」が支持されている、生協のブランドです。

左:伊勢うまイネ豚  中央:生協牛乳  右:久米島産生もずく

産直商品には、商品カタログや店舗での
値札にマークをつけています。

産直産地は日本全国に

 各産地に担当バイヤーが足を運び、栽培や育成について点検を行い、産直にふさわしい商品を選定します。誰がどこでどのような方法で育てているのかが、明確なのが産直商品の特徴のひとつです。

顔の見える安心感

 商品を届けるだけではなく、組合員と生産者の交流を大切にしています。産直商品の学習会や産地を訪問する交流会の実施、さらに組合員による産直商品の魅力発信なども行っています。コロナ禍でも現地での交流に代えて、オンラインでの学習会や交流会を開催しています。

食料自給率の向上にもつながる

 私たちが産直商品を購入することで、生産者が商品を安定して作り続けることができます。また、日本の農林水産業を応援し、食料自給率の向上や豊かな地域社会づくりにも役立ちたいと考えます。

産直の学習会・交流会

「越 裕之さんのほぐしめじ」
生産者 越裕之さんの商品や産直への思い

学習会のようす

ほぐしめじの誕生エピソード

 長野県はきのこ栽培が盛んな地域。しめじは昔から栽培していましたが、株をカットしてほぐした状態で販売する「ほぐしめじ」は世の中には存在しない商品でした。廃棄するだけのトレイや石づきを付けたものを販売するのは、輸送コストを含めてもったいないため、しめじをバラした袋詰めにしてみようと提案があり、2001年に誕生しました。
 この「ほぐしたしめじ」を知ったいずみ市民生協のバイヤーさんが大変気に入ってくれて、初めて商品として販売することになりました。ほぐしたしめじだから、「ほぐしめじ」と呼ぶようになったのです。『越裕之さんのほぐしめじ』というネーミングは「名前を付けた方が覚えてもらいやすいですよ」とバイヤーさんのアドバイスでつけていただき、今でも使用されています。気軽に了承したのですが、商品に名前を入れることで、学習会や交流会に行くと、「越さんのほぐしめじ」の名前で通っていて、人気が広がったと実感しています。

(株)ハーツ 広報部部長
キノピーノ

大切な組合員との交流

 産直で思い浮かぶのは、やはり組合員さんとの交流です。学習会や交流会の依頼回数は、数ある生協の中で、いずみ市民生協がダントツです。商品カタログで、私の顔写真が掲載されていることもあるため、「あっ!写真の人だ」「初めて会った気がしません」と言われたこともあります。組合員さんには、食べ方のレシピ提案をいただいたり、栽培について生産者が見過ごしそうなことを質問されたり、教えられることがたくさんあります。こういった組合員さんとの交流が、商品を作る上で本当に大切な機会です。コロナ禍で直接の交流は厳しいですが、オンラインでの学習会ができればと思います。参加人数が限定されず、移動の必要もないので、たくさんの人に産直「ほぐしめじ」の魅力を知ってほしいです。

交流会のようす

「産直商品」は鮮度抜群

 産直で良かったと思うことに、収穫後最短2日※、鮮度抜群でお届けできることです。きのこの収穫から、自宅に届くまでの流通の仕組みを学習会などで説明すると「知らなかった」と驚く方が多いです。受注数がわかり、計画的に栽培できますし、組合員さんは一番おいしい状態で食べることができる。お互いに理想的な形ではないでしょうか。

※一般的な流通方法ではさまざまなプロセスを経るため、店頭に並ぶまでにより多くの日数がかかっています。

「おいしい」を一番に、環境とコストダウンを意識して栽培

おいしさが一番の種菌開発

 栽培改革でいちばん大切に考えたのは、しめじのおいしさです。食感に関わってくる形、茎の太さ、味わいなどはそのままで、栽培期間だけを短縮できるように種菌※開発をしました。

 学習会で「ほぐし方やカット方法においしさの秘密があるの?」と聞かれたこともありますが、『越裕之さんのほぐしめじ』のおいしさの秘訣は、栽培技術と種菌の開発にあります。

※種菌とは、きのこなどを栽培する時に用いられる、培養した菌子や胞子の塊などからなる菌株のこと。

種菌

栽培改革で環境保護とコストダウン

 約1年前から栽培の改革に本格的に取り組んでいます。未来や環境を視野に入れた生産活動と合わせて、コストダウンを図らなくてはならないと考えたからです。
 短期間で収穫できる種菌の開発は、コストダウンと環境保護の両立にも有効です。電気や燃料の使用を抑えて、消費電力を下げながら、しめじが呼吸しやすい濃度や温度を保っています。また、しめじの栽培環境の空調のために使用する冷凍機の冷媒ガスも、環境にやさしいガスへの変更をすすめています。

工場のようす

きのこ栽培はすべてリサイクル

 しめじなどのきのこ栽培で使用する材料は、すべてリサイクルできるものです。きのこ栽培に携わっていた人は“リサイクル”という言葉がない時代から、材料を循環させていました。きのこを育てる人も他の農産物を育てる人も食べる人も地球も喜ぶ栽培方法です。

工場見学のようす

ほぐしめじQ&A

Q. ほぐしめじの保存方法は?

A. いちばんおいしい状態で収穫しているので、届いたらすぐ食べていただきたいです。保存の場合は冷蔵室へ入れてください。旨み成分が料理にしみこみやすい冷凍保存もおすすめです。ただし、1か月以内に食べきってください。また、冷凍したものは解凍不要。すぐに調理しましょう。

Q. 調理前に洗う?洗わない?

A. 菌類のきのこに、他の菌が繁殖することは少ないと言われていますので、洗っても洗わなくても大差はありません。しめじに水がしみ込んで、味に影響を与えますので、洗った場合は水切りを十分行ってから調理しましょう。

Q. 消費期限の目安は?

A. ハリがない場合や、かさを触ってふにゃっとした感触を得た場合は腐っています。

越さんおすすめ、かんたんレシピ紹介
ほぐしめじのソテー

つくりかた

①火をつける前のフライパンにほぐしめじを入れます。油などは引かず、中火にかけて蓋をして火を通します。

②ほぐしめじから水分が出てきてふつふつとしてきたら蓋を外し、水分が飛んだらバターを入れます。醤油と香りづけ程度のカレー粉を入れてできあがり。

ポイント
  • この順番で炒めれば、バターは普段の半分の量でもおいしいです。
  • カレー粉の香りでお子さまでもパクパク食べてもらえます。
  • 冷蔵保存のしめじを使用の場合、調理の1時間前に、冷蔵庫から出して開封しておくことをおすすめします。

越 裕之さんのほぐしめじ
コープの宅配で毎週企画しています。軸の太さと旨みの強さが自慢です!ぜひご利用ください。

組合員のみなさまへメッセージ

 組合員さんに「おいしい」と言ってもらえることがいちばんの喜びです。職員全員、情熱をこめてしめじ栽培に向き合っています。きのこ作りにおいて、組合員さんから教えられることがたくさんあり、支えられてきました。これからも「こういう商品が欲しい」「これはどういうこと?」など気になったことはどんどん声を上げてほしいです。それが産直の良さだと思います。コロナ禍が終息したら、ぜひ長野にお越しください。みなさまに会える日を心待ちにしています。

越 裕之さん(中央)と社員のみなさん