乳幼児期の子育てとは違う悩みが出てくる思春期。子どもとのコミュニケーションや言動の変化に、戸惑うことも増えてくるかもしれません。
子どもの成長を支えていくために、思春期の子どもに対する親の考え方、向き合い方を紹介します。
フェリアン 澤樹 亜実さん
臨床心理士、公認心理師、学生相談室カウンセラー
大学院入学当初より不登校支援で学校現場に関わり、現在に至るまで様々な現場で子ども・保護者・教職員に対する心理臨床活動を行う。
時期は10~18歳頃(小学校高学年~高校3年生)。こころとからだの両面で劇的な変化があり、本人にとっても周囲にとっても嵐のような時期。言葉で、順序立てて説明できないような感情や行動を起こします。
※年齢や期間には個人差があります。
考え方に変化が起こります。抽象的なことを考えられるようになり、仮説や長期的な見通しを立てられるようになります。一方で心の中では、「自分とは何なのか?」「親がうっとうしい、でも甘えたい」「友だちと一緒にいたい」「友だちに嫌われたくない」などさまざまな気持ちが入り乱れているため、その心はとても揺らぎやすく、まるでジェットコースターのようです。
第二次性徴の時期で、男子はヒゲが生えたり、声が低くなったりします。女子はからだに丸みが出てきて、月経が始まります。
思春期の子どもは、からだが先に変化を迎えることが多く、こころの変化が追いついていない状態。いわばこころとからだの成長がアンバランスです。
反抗期は人生で2回あるとされていますが、思春期は人生で1回限り。
1回目の反抗期は、2歳ごろから始まるものでイヤイヤ期とも言われます。
2回目の反抗期は、思春期と同じ時期に始まるものです。思春期の心身の変化から「自分とは?」と自己を振り返り、「親とは違う」と自立する気持ちが芽生え、反抗的な言動を取ります。
思春期の子どもは、大人と比べて、言葉で自分の気持ちや状況を表現することに長けていません。そのため、短絡的な言葉や態度として現れ、それが大人の目には反抗的に映ります。
思春期は自我を確立していく時期。「自分はもっとできると思っていた、でもできない」など理想の自分と現実の自分のギャップを知り、葛藤しています。「手がかからない」「うちの子は反抗しない良い子」と思われている場合でも、ひとりで悩みを抱えていることもあります。
親より同世代の友だちとの距離を近づけたくなる時期。親に打ち明けられない悩みや親には知られたくない秘密を友だちと共有し、友だちの存在を心の支えにします。また、友だちとの関係を最優先させ、「仲間はずれにされたくない」という気持ちも高まります。
心理的な親離れが現れる時期。いつも一緒に行動していたのに親と出かけることを嫌がったり、友だちといる時に親が声をかけると無視をされたりすることも。その一方で、家の中では親に甘えることも。自立と依存の間で揺れ動いているがゆえの行動ですが、一貫性に欠けるため、親は戸惑います。
親からの自立や自己の確立時期のため、親子間で波風が立つのはあたりまえです。子どもの力を信じ、親も一緒に悩みながら成長していくことを心がけましょう。ただし、子どもにはまだまだ社会を知らない未熟さもあります。危ないことや犯罪に手を染めるようなことをしているときは、親が全力で阻止し、身を呈して壁になりましょう。
対等な人間として接しましょう。子どもは親の所有物ではないことを認識しましょう。
子どもの置かれている状況を理解しましょう。子どもゆえの思い込みの強さもありますが、それは子どもの心の真実です。否定しないでください。
好きなことやものに夢中になっている姿を認めましょう。子どもの好きなアニメやゲームなどを一緒に楽しむのもおすすめです。
多少の失敗や苦労は必要です。いつも失敗や苦労を親が防いでいると、子どもはそれらを恐れるようになります。失敗した時の対処を親子で考えておくことが良いかもしれません。
親の意見の押し付けは好ましくありません。子ども自身の考えを聞いた上で、「私はこう思う」とひとつの意見として提示しましょう。
「なぜ、そんなことするの?」と原因を探るの こんな時は…ではなく、「何を意味しているのか」とその背景にあるものを考え、子どもの気持ちをキャッチしましょう。
子どもは心の中でさまざまなことを考えています。目に見える様子だけで判断しないでください。いろいろな要因が重なって、ごく一部が現れているととらえましょう。
※SNS…ソーシャルネットワーキングサービスの略。インターネット上でサービスに登録した利用者が投稿したり、個人同士がつながれたりするサービスのこと。
子どもは付き合いをやめられない、簡単にブロックできない。
だから悩んでいます!子どもの置かれている状況を理解しましょう。
1.悩みをひとり or 家族内で抱え込んでいる時
誰にも相談できず、追い込まれるケースもあります。子どもとの共倒れを避けるためにも、困った時は信頼できる人、または専門機関に相談しましょう。
2.子どものイライラの理由がわからない時
いつもより明らかに優しくしたり、過度に機嫌を取ると子どもは察知します。親も素直に振る舞いましょう。
3.子ども同士のトラブルが起こった時
親はできるだけ介入せず、子ども同士で解決させましょう。※心身の危険を感じた場合は、親の介入が必要です。
家族、夫婦、学校など身近な人に相談しましょう。また、臨床心理士や公認心理師の資格を持つこころの専門家を頼るのも選択肢の1つに。その場合、スクールカウンセラー、地域の子育て相談機関、大学付属の心理相談機関などへご相談ください。(親のみの相談も可能です)
からだの不調がある場合は、内科・心療内科・児童精神科・思春期外来を受診しましょう。