機関誌いずみ2023年3月号特集ページ

家族のコミュニケーションにも 新生活に向けて、おいしく楽しくお弁当作り

進学や進級、異動などで新しい生活が始まることの多い春。4月からお弁当作りがスタートする人もいるのではないでしょうか。今月号ではお弁当作りの極意について、管理栄養士であり、自らもお子さまのお弁当作りを続けてきた東山幸恵先生にお話を伺いました。

お話いただいた方

東山 幸恵先生

愛知淑徳大学 健康医療科学部健康栄養学科教授・管理栄養士
大学卒業後、大学病院に勤務。小児栄養を専門とし、お弁当についてのトークセッションなども開催しています。

※お弁当の写真はすべて東山先生よりご提供いただきました。

お弁当はお手紙です

コミュニケーションになる

お弁当はほとんどの場合、食べる人と作る人が同じ空間にいない状態で食べることになります。昨夜、ケンカをしてピリピリした雰囲気であっても、お弁当箱を開くと好きなおかずが入っていた。こんな小さなことでも、面と向かって話すより心が和らぐきっかけになるものです。そういう意味でお弁当はとても“雄弁”だと思います。

“お弁当って食べる人へのお手紙になるし、空のお弁当箱は返事のようなもの”

これは、私自身が子どものお弁当作りを経験して感じたことです。ある時、息子が私の作るお弁当に対して感謝も言わず、反抗的な態度を取ったことがありました。私も堪忍袋の緒が切れて、「もうお弁当作らないから、自分で作りなさい」とお弁当ストライキ。2日間だけは自分で作っていました。当時はお互いに「キーッ!」となっていたけど、親子で共有する思い出です。こういうことも含めて家族のコミュニケーションになるのではないでしょうか。顔を合わせればケンカという状況でも、お弁当箱が空になっていれば大丈夫!食べることでコミュニケーションができていると思えたら良いですよね。

ふだんの食事と考えて作る

ふだんのお弁当は日常の一部です。遠足や運動会など行事のために作るお弁当は「ハレのお弁当」ですが、ふだんのお弁当は「映え」のことは気にせず、気楽に作れば良いのです。
お弁当箱や詰め方を変えるだけで、バラエティは広がります。おすすめは「のっけ弁当」です。お弁当箱に敷き詰めたごはんの上に豚肉の生姜焼きや炒り卵、牛肉のしぐれ煮、天つゆをしみこませた天ぷらなどをドンとのせるだけ。おかずの味つけがしみたごはんは冷めていてもおいしく食がすすみます。また、焼きそば&目玉焼き弁当にみかんを添えたことも。特別なおかずを作るのではなく、いつもの食事の延長と思えば、作る側の気持ちも少し楽になるのではないでしょうか。

完璧じゃないわが家の味でいい

家で食べる料理は、家庭ごとにちょっとずつ味つけやサイズ、カットした形が違うものです。レストランで食べる料理のようなパーフェクト感がないところが魅力でもあります。お弁当を食べる子どもたちは、「自分のために誰かが作ってくれるおかず=うちの味」ということに安心感を得ています。

“なんか違う”いつものお弁当じゃない

息子の友だちのお母さんが体調不良でお弁当を作ることができなくなった時、息子とその友だち、2人分のお弁当を作って持たせたことがありました。ところが数日後「もう友だちのお弁当は作らなくていいよ。なんか気を使って食べているみたいだから」と息子に言われました。その言葉で「お弁当ってただ食欲を満たすだけじゃない。友だちは、自分のうちのいつものお弁当じゃないから安心できないんだ」ということに気づきました。

組合員に聞きました!みんなのお弁当エピソード

新学期が始まる前に「自分で気に入ったものを選べば、大切に使うでしょう。食べ終わったら、洗って手入れしないと汚くなって使えなくなるよ」と、母とお弁当箱を買いに行きました。

衛生面に気をつけ、炊き立てごはんは広げて冷ましてから入れています。夏場はおかずの端にからしかわさびを紙カップで少し入れていました。

学校のお昼ごはんでストレスがないように、あえて好きな物だけ。栄養バランスはとれるメニューにしています。

みんな知りたい お弁当作りのテクニック

「主菜より副菜の調理に手間がかかる」「頭を使いながら、体を動かすので疲れる」など、お弁当作りは想像以上に労力をともないます。組合員からのアンケートをもとに、東山先生に効率よく楽しみながら作る極意を聞きました。

Q. 忙しい朝、どうやったら短時間で作ることができますか?

A.ゼロ時間で作ることはできないので、できるだけ事前準備をしておくことをおすすめします。例えば、「かぼちゃは前夜にカットして朝は茹でるだけ」「ブロッコリーは先に茹でておいてお弁当箱に詰めるだけ」にすれば、包丁やまな板を使う時間が省けます。

Q. 夕食のおかずをお弁当に入れても良いですか?

A.ふだんのお弁当は食事の延長ですから、夕食のおかずを入れるのは大歓迎。豚の生姜焼きや唐揚げ、とんかつ、魚の照り焼きなどは家で出来たてを食べてもおいしいものですが、時間が経っても味がしっかりしているので、お箸がすすむと思います。

Q. 味つけがワンパターン。どうしたら変化を付けられますか?

A.メインのおかずは醤油や塩こしょうなどで味つけをするものが多いので、甘い味や酸味のある副菜を入れましょう。味にメリハリがでて、満足感が上がることになります。わが家では、うずら豆の甘煮やさつまいも煮、かぼちゃの煮物、キャロットラペやレモンとはちみつに漬けたミニトマトをよく入れていました。

Q. おいしそうに見えるお弁当の詰め方を教えてください。

A.ごはんとおかずを完全に分割するのではなく、ごはんを遠浅の海岸のように敷くのがポイント。なだらかな坂にして、ごはんとおかずの境目を大葉などの緑で仕切ります。おかずは、隣同士に色の近いものを並べると地味な印象になります。

Q. ちょっとした隙間ができるのが悩み。隙間解消おかずは?

A.隙間を埋めてくれるのは小さなおかず。豆の煮物や燻製のうずら卵などを数種類常備しておきましょう。また、レモンやすだちのカット、レタスなどの葉物野菜などを挿し込むのもおすすめです。

Q. いつも茶色系のおかずばかり。彩りのきれいなお弁当を完成させるには?

A.赤・緑・黄色を加えると、お弁当に華やぎが生まれます。赤色はトマト、にんじん、赤ピーマンをおかずとして取り入れましょう。紅しょうがや梅干しも良いですね。緑色は大葉やグリーンリーフなど葉物野菜。グリーンリーフは立体的な形状なので視覚的な動きも演出できます。黄色は玉子焼きや半分にカットしたゆで卵で。レモンの薄切りもおすすめです。

※幼児食(おおむね1歳~5歳)ではミニトマトは誤って喉に詰まらせてしまう可能性があり「4分の1に切るように」と消費者庁から注意喚起がされています。ご注意ください。

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Q. おかずの汁もれ、解消するには?

A.汁が気になる場合は、お弁当箱の底に小さくカットしたキッチンペーパーを敷いて、その上に汁ものおかずをのせてください。汁気を吸ってくれます。隣には汁が染み込んでしまっても、味が損なわれないおかずを詰めるようにしましょう。

Q. 前夜に作ったおかずは加熱せずに詰めても大丈夫?

A.前夜に作ったものを冷蔵庫で保存していても、菌が増殖する可能性はなくしきれません。おかずはすべて再加熱してから、詰めましょう。

※市販の冷凍食品の中には自然解凍OKのものもあります。それらは完成直後に一気に冷却させ、菌が繁殖しにくいようにしています。

Q. ごはんやおかずが温かい状態でふたをするのはだめ?気温が高くなる季節の衛生対策は?

A.ごはんやおかずをしっかり冷まして菌の増殖を抑えることが大切です。温かいままでふたをすると、湯気で水滴が生じて、おいしさを損ないます。早く冷ますコツとして、「扇風機の風を当てる」「詰める前のおかずを保冷剤で冷やしたバットに並べて一気に冷ます」があります。また、殺菌・防腐効果がある梅干しがおすすめです。丸ごとごはんの上やおにぎりの中に入れるのではなく、つぶしてまんべんなくごはんに混ぜるとより効果的です。

Q. フルーツのおいしさをキープするには?

A.できれば、ごはんやおかずなどを詰めたお弁当箱とは別の箱に入れることをおすすめします。ひとつのお弁当箱に入れる場合は、レモン汁などを果物の表面にまぶして色止めしてください。

編集担当よりお弁当におすすめ商品!

コープの宅配

そのまま食べられる のりカップ(次回予定:3月4回)

国産焼海苔がカップの形になっていて、そのまま食べられます。お弁当箱にゴミを残しません。

コープの宅配、コープのお店

白身魚とタルタルソースフライ(次回予定:3月3回、コープのお店:販売中)

MSC認証されたすけとうだらと、まろやかで程よい酸味のタルタルソースを包んだサクッとした衣がおいしい!レンジ・自然解凍どちらでも調理でき、お弁当にピッタリです。

東山先生からのメッセージ

毎日のお弁当作りはとても大変なことです。でも、ふだんの食事の延長だと考えて、家庭の味をお弁当箱に詰めればいいと思います。作り続けることで「これだけはやった」という自信になりますし、子育ての思い出のひとつになるはず。お弁当を通して、家族のコミュニケーションを楽しんでください。