世界各国で様々な支援活動を行っている赤十字。その根底にあるのは「平和」への思いです。実際にどのような活動をしているのか、そして現在の世界の情勢は?実際に現地で支援活動を行った方の声もお聞きしながら、「平和」について考えてみましょう。
第一回ノーベル平和賞受賞者であるスイス人、アンリー・デュナンが提唱した「人の命を尊重し、苦しみの中にいる者は、敵味方の区別なく救う」を目的とし、世界191の国と地域に広がる赤十字・赤新月社のネットワークを生かして活動する組織です。
日本赤十字社は、1877年の西南戦争のさなかに設立された「博愛社」という救護団体が前身。日本政府のジュネーブ条約(赤十字条約)加入翌年の1887年、博愛社は日本赤十字社に改称し、世界で19番目の赤十字社として正式に認められました。
世界中の災害や紛争、病気などに苦しむ人々を救うため、世界最大のネットワークにより緊急時の救援や、予防活動に取り組んでいます。
数か月の緊急救援の後には復興支援が始まるため、緊急救援後もその場に残り、地域の人たちが自ら立ち上がるのを支え続けます。
被災者も参加して仮設住宅建設の資材運び(フィリピン)©日本赤十字社
緊急救援・復興支援だけではなく、長期的な視野でさまざまな開発事業にも取り組んでいます。
ルワンダの子どもと支部職員©Atsushi Shibuya/JRCS
紛争の影響を最小限に抑えることを目的とした「国際人道法」の普及活動などを行っています。
赤十字マークは、戦争や紛争などで傷ついた人びとと、その人たちを救護する軍の衛生部隊や赤十字の救護員・施設等を保護するためのマークです。紛争地域等で「赤十字マーク」を掲げている病院や救護員などには、絶対に攻撃を加えてはならないと国際法や国内法で厳格に定められています。またその使用については、赤十字社と法律等に基づいて認められている組織に限られています。
2022年2月24日以降、ウクライナ各地で戦闘が激化。子どもを含む死傷者が多数報告され、極めて深刻な人道危機が起こっています。
2023年2月6日、トルコ南東部のシリアとの国境付近で発生した地震により、トルコ、シリア両国合わせて6万人以上が犠牲となる甚大な被害を受けました。
崩壊したビルの現場で救護活動にあたるシリア赤新月社のスタッフ ©SARC
2010年に中東各国で起こった民主化運動(アラブの春)から内戦へと発展。レバノンやトルコ、ヨルダンなど周辺国へ逃れた難民や、国内避難民を多く生み出し、シリアの人たちの厳しい状況は現在も続いています。
赤十字では、人々の苦痛を少しでも和らげるため、食料や水、住居、保健医療、こころのケアなど、世界各地で必要な支援を届ける事業などを継続的に行っています。
高校時代に黒柳徹子さんの著書「トットちゃんとトットちゃんたち」に出会い、世界の子どもたちの現状を知り、大学ではNGO活動なども行い国際救援にかかわる仕事をめざす。卒業後、一般企業を経て日本赤十字社に入社、現在に至る。
「2022年の3月~7月の4か月間、ウクライナの隣国、モルドバに支援活動に行っていました。モルドバは直接の紛争地ではないので、大きな被害は受けてはいません。ただウクライナから多くの人が周辺国に避難し、モルドバにも約10万人が避難していました。驚いたのが、避難民の95%は避難所ではなく、モルドバの一般の家庭に身を寄せていたことです。そのため、私たち赤十字が支援するのは、ウクライナからの10万人の避難民と、避難民を支援しているモルドバのホストコミュニティの人たちです。」
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「救援物資保管倉庫の管理責任者として、ロジスティクス(※)部門で活動していました。避難されている方への支援だけではなく、チームの車両や安全管理など、チームを支える役割もあり、活動は多岐に渡ります。私のミッションの1つはモルドバでの物資の配布でした。その中でも非常に大きな支援効果が出ているのが現金配布でした。彼らはお金を使って必要なものを、必要な時に手に入れることができ、生活を守るという意味でも効果がありました。」
※ロジスティクス:物流、物品管理、倉庫、車両、調達などを管理している。
配付食料品の選定作業
「決定的な違いは、紛争は避難民がいつ通常の生活に戻れるのかわからない。終わりが見えない支援活動ということです。活動中も"モルドバが次のターゲットになるのでは?"という噂もあり、すぐに逃げることができるような訓練や、避難プランをチームでも作っていました。紛争は自然災害とはまた違う緊張感が毎日続いていました。」
「平和は"それぞれが自分の求めている生活ができる"ということです。災害や感染症などは自然発生的なものなので、それに抗うことができません。でも紛争など人為的なところに関しては、止めることができる、コントロールできるはずだと思っています。日常を人間が壊す行為は決して平和ではありません。」
「バングラデシュ、ネパールなどの支援活動では日本赤十字の医療チームの一員として参加していましたが、今回、初めて国際赤十字のロジスティクスの専門スタッフとして1人で派遣され、10か国以上の人たちと一緒にチームを組みました。今回の経験により日本赤十字社の枠だけではなく、国際赤十字の一員として活動していきたいという思いが強くなりました。また、ロジスティクスは実生活のすべての活動につながっていくということを実感したので、ノウハウや知識などスキルをもっと磨いていきたいですね。」
「国際救援は、自分たちに何ができるかを考えることから始まるのではないかと思っています。安全な水が手に入らない、いのちや健康が守られない、学習の機会が奪われる。私たちにとって『アタリマエ』のことが『アリエナイ』そんな現状が世界にはあります。今、世界で起こっていることにまずは関心を持っていただき、次に自分に何ができるかをぜひ考えていただきたいです。」
献血会場や献血の詳細について
大阪府赤十字血液センター公式ホームページ
日本赤十字社は「いのちと健康を守る」人道的活動を続けてまいります。いつ発生するかわからない災害や紛争に備え、医療救護班がすぐに対応できる体制を整えるとともに、国際赤十字の一員として海外での救援活動も息長く続けてまいります。
紛争・災害・病気などで苦しむ人を救うため、赤十字活動資金への温かいご協力をお願いします。
いずみ市民生協では、1988年から活動資金の寄付協力や、お店での献血への協力やボランティア活動における連携等を行っています。
2023年は国内災害救護活動、ウクライナ人道支援等に対しての活動資金支援として、いずみ市民生協から100万円を寄付しました。