あなたの献血が患者さんに届くまで

今月の特集

「人の命を救う献血」とわかっていても、どこか怖いと感じることがあるかもしれません。また、血液がどんな場面で使われているのか、知らないことも多いものです。そこで今回は、大阪府赤十字血液センターの恵比須有実子さんにお話をうかがい、実際に堺東献血ルームで献血を体験してきました。

代替テキスト

大阪府赤十字血液センター

  • 左)堺東献血ルーム 所長 林 正人さん と
    日本赤十字社キャラクター「ハートラちゃん」
  • 右)事業推進一部 献血推進課 恵比須有実子さん と
    献血キャラクター「けんけつちゃん」

そもそも、どうして献血は大切なの?

血液は人工的につくれない

血液は人工的につくれない血液は、体中に酸素や栄養・ホルモンを運ぶ、生命維持に欠かせない存在です。医療現場では毎日多くの輸血が行われ、病気治療から事故による外傷まで、さまざまな場面で患者の命を支えています。
しかし、科学が進歩した今でも血液は人工的につくることはできず、長期間保存することもできません。採血後の有効期間は最短で4日ほどで、検査などを経ると実際に使えるのは約2日。そのため、輸血医療は健康な方の"継続的な献血"に頼るしかないのです。

血液はどんなことに使われているの?

献血された血液は、主に輸血と医薬品の原料に使われます。
輸血というと、事故の輸血に使われているイメージがありますが、その約5割は、がん(悪性新生物)や白血病などの治療に用いられています。
一方、医薬品は、川崎病などの免疫疾患や、腹水を伴う肝硬変といった病気の治療に用いられます。

疾病別輸血状況(2023年 東京都)
※不詳は除く

※令和5年東京都保健医療局調べを加工

たとえばこんな場合

血液疾患治療

白血病や再生不良性貧血では、骨髄が血液をつくれなくなるため、輸血によって貧血や出血の症状を改善します。

外傷・消化管出血

大量出血を伴う、交通事故や大動脈瘤破裂。血液が迅速に届くかどうかで生死が分かれます。

分娩時の出血

予測できない出産後の大量出血。出血が止まらないとき、赤血球・血しょう・血小板を組み合わせた大量輸血が母体を守ります。

血液は足りているの?

献血の現状冬は血液が不足しやすい傾向

2021(令和3)年度~2023(令和5)年度 赤血球製剤の月別供給数と全血献血者数の比較

  • 月平均供給数
  • 月平均献血者数
  • 製品化率を加味した月別必要献血者数

※特に4月、10月~3月は必要献血者数を下回る傾向があるため、特にご協力をお願いしています。

出典:日本赤十字社パンフレット「愛のかたち献血」

日本赤十字社では需要を見ながら献血への協力を呼びかけていますが、この折れ線グラフのように、月によっては実際の献血者数(青線)が、必要な献血者数(緑破線)に届かないこともあります。
特に冬は血液が不足しやすい傾向に。風邪やインフルエンザの流行で献血に来られる人が減るうえ、ヒートショックなどで救急搬送される患者が増え、輸血の需要が高まるためです。年間を通じた継続的な献血が欠かせませんが、なかでも冬場は一層の協力が求められています。

ちょっと怖いかも?

安心してね 献血は安全&気軽にできます!

献血をしたことがない方は不安を感じる方もいるかもしれませんが、
献血は安全性を十分に配慮した取り組みがされているほか、意外と気軽にできるんです。

体に負担がないよう
基準が定められている

採血量は、血管内を流れている血液量の15%以下に抑えられており、これは日常生活に支障のない範囲。また安全面を考慮し、年齢や体重、年間の採血量など、細かな基準も設けられています。

事前検査で体や血液の
安全性をしっかり確認

献血当日も、血圧測定や少量採血を行い、貧血の心配がないかを確認します。
「服用中の薬があっても献血できるの?」といった疑問がある場合は、事前に血液センターへ相談することも可能です。

献血できる場所は
意外と身近なところに

大阪には12か所の献血ルームがあり、駅前や商店街などアクセスしやすい立地に位置しています。最近は、カフェ風や高級ホテルのような雰囲気の献血ルームも登場。また、移動式の献血バスが商業施設や事業所に出向くこともあり、より気軽に献血できる機会が広がっています。

献血、やってみた!

今回、実際に献血を体験してきました。
なお、予約は必須ではありませんが、
混雑している場合があるので
予約して行くことをおすすめします。

受付

受付確認表の記入、本人確認※、体重測定を行います。初回の場合は、献血に関する注意点をスタッフの方から受けます。なお、「3日以内に出血を伴う歯科治療を受けていないか」「4週間以内に海外に行っていないか」など、献血の条件もここであらためてチェックします。
※初回の場合は、運転免許証やマイナンバーカードのように1枚で氏名、生年月日、顔写真がわかる物を提示

問診

問診や血圧・脈拍・体温を測定します。「切り傷がかさぶたになっているけど大丈夫か」といった疑問がある場合も、ここで健診医に確認してもらえます。

事前検査

指先で少量採血を行い、ヘモグロビンの濃度や血液型を検査します。

採血

ベッドに横になり、採血スタート。所要時間は、全血献血※は10〜15分程度、成分献血※は40〜90分程度です。採血中は飲物を飲んだり、モニターやスマホで動画視聴をしたり、漫画を読んだりとリラックスして過ごせます。
※全血採血はすべての血液を採血する方法。成分採血は血液内の特定の成分のみを採血する方法。

休憩~終了

採血後は休憩スペースに移動し、水分をとりながら休憩。
終了後は、献血記録の確認や予約ができるアプリ「ラブラッド」に登録するのがおすすめ。数日後には、生化学検査7種類、血球計数検査8種類の検査成績を見ることもできます。次回の献血予約や問診に便利。ポイントサービスもあります。

いずみ市民生協も協力! 献血すると記念品が

献血の記念品として、この日はミニタオルと薬用歯磨きをいただきました(記念品やサービスは、日や場所によってさまざま。キャンペーンなどもあるそう)。
いずみ市民生協では日本赤十字社への協賛で、400mL献血への記念品としてコープの「ふかひれスープ」を堺東献血ルームに提供しています。

体験
スタッフの
感想

献血は初めてです。400mLの献血で、問診から休憩終了までで1時間も経っていません。
意外と早く終わったと感じました。
採血時の痛みは少しチクっとするくらいでした。献血ルームの方が注意点を教えてくれますし、「大丈夫ですか」と気づかってくれるので、安心して最後まで過ごすことができました。献血ついでに血液型やヘモグロビンの濃度も教えていただけたので、自分を知るいい機会にもなりました。

献血した血液はどうやって
患者さんのもとへ?

1. 検査

採血された血液は、まず血液センターに運ばれます。そこで、輸血や医薬品に適しているかどうかを確認するため、感染症にかかっていないかなどの検査が行われます。

2. 製剤

血液の成分ごとに分類し、輸血用血液製剤、もしくは、血しょう分画(ぶんかく)製剤という薬の元となる原料に分離・調整されます。

3. 保管

完成した血液製剤は、各地域の供給拠点に運ばれ、専用冷蔵庫や専用冷凍庫で保管。各製剤には適した保存温度があり、この条件のもとで管理されます。

4. 医療機関へ供給

医療機関からの発注に合わせて必要量を毎日配送。このほか、緊急の要請があった場合にも、24時間体制で対応しています。

だれかの献血が助けてくれました

輸血経験者さまから

白血病と診断されたその日の採血で、ヘモグロビン値が4.3(※女性の基準値は12前後)まで下がっていることがわかりました。歩くのも辛い状態だったので、その日に急きょ輸血をすることに。
輸血を受けた後は、顔に血色が戻り、ふらつきや息切れもなくなり、体がとても楽になりました。
また、その後の抗がん剤治療中にも輸血を受け、それによって治療に進む力を取り戻すことができました。見ず知らずの誰かの善意が、私を支えてくれている...それが本当にありがたく、また心強くも感じました。

大阪赤十字病院の現場から

白血病や再生不良性貧血の患者は毎日のように血小板輸血が必要ですが、在庫が少ないと「今日必要な量を確保できるか」が常に不安になります。また、救急・産科において突発的な大量出血症例が発生すると、在庫が一気に底をつきます。このように、患者さんに必要な血液を確保できるかどうか、毎日が緊張の連続です。血液が届いた瞬間には、ようやく胸をなでおろすことができます。

献血は治療や手術に欠かせない、医療の大切な支えになっているんですね。
献血に来られる方の中には、社会貢献としてのほか、「友達に誘われたから」「時間があったから」と気軽に訪れる方もいるそうです。どんなきっかけでも、自分が献血をすることで誰かの命をつなぐことに変わりはありません。献血ルームや献血バスを見かけたら、ぜひ献血を検討してみてくださいね。





TOP